作曲をしてみたいけれど、何から手を付けていいかわからない、という方はコード進行から考えてみるのが一つの手です。
私は今でこそメロディーやアレンジの方向性から先に考えて作曲することも多くなりましたが、少し前まではコード進行を先にガシガシに決めてからメロディーを考えることが圧倒的に多かったです。
コード進行を先に決めてしまうと、メロディーが不自然になりやすかったり、自由度が制限されやすいデメリットもあるので、コード進行から作ることが必ずしも良いとは思いません。
ですが、コード進行から曲を考えるというのは作曲初心者の方にもとても入りやすい方法ですし、また、メロディーから普段曲を作っている方はたまにはコード進行を決めてから作曲するとまた新鮮な発想で曲ができるかもしれません。
そういった方々に向けて、今回はそんなコード進行から作曲するために知っておいたほうが良いと思うことを書いていきます。
基本的なことから、個性を出すためのコード進行の作り方まで何回かに分けて書いていこうと思います。
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今回はコード進行を考える上で基本となる『ダイアトニック・コード』を使った作曲方法をお伝えします。
ダイアトニックコードとは『長音階(メジャースケール)・短音階(マイナースケール)上の音を主音から一つ飛ばしに音を積み重ねてできる、7つのコード』のことです。
文章にすると非常にわかりにくいのですが仕組みはとても簡単です。以下の図をごらんください。
上の音階はCメジャースケール(ハ長調の長音階)です。
ここに並べられた音を最初のドの音から『ド、ミ、ソ、シ』と一個飛ばしに4つ音を積み上げていきます。そうするとCMaj7の和音ができます。
同様に、次は隣のレの音から音を『レ、ファ、ラ、ド』と一個飛ばしに4つ積み上げていきましょう。そうすると今度はDm7の和音ができます。
あとは同じように音を一個飛ばしに積み重ねて和音を作っていくと以下のような7種類のコードができます。
この7つのコードが『ダイアトニックコード』です。
ちなみに上の図の、音符の上に書いてあるのはコードネーム(和音の名前)ですが、音符の下にローマ数字で表しているのはディグリーネームと呼び、そのキーにおける度数を表した表記になります。
ディグリーネームは簡単に言うと、そのキーにおいてどんな役割をもつコードなのか、ということを表したものです。例えば、ⅠMaj7(いちどメジャーセブンと呼んでいます)は安定感があり、終わる感じを出す、という役割をもっています。Ⅴ7(ごどセブン、属七と呼んでいます)の和音は緊張感があり、続く感じを出す、という役割があります。
この役割は3つあり、それらを①トニック【T】、②ドミナント【D】、③サブドミナント【S】といいます。
①トニック【T】は、安定感があり、終わった感じ、または一旦落ち着いた感じを出すことのできる役割をもつコードのことです。【IMaj7、Ⅲm7、Ⅵm7】がこのトニックに分類されます。
②ドミナント【D】は、緊張感があり、続く感じを出す役割をもつコードです。【V7、Ⅶm7(♭)】がこのドミナントに分類されます。
③サブドミナント【S】は簡単に言うとトニックとドミナントの架け橋のような役割があり、ドミナントの直前に入れることで、いきなりトニック→ドミナント(安定→緊張)になる展開をもっと段階的に、滑らかにする役割があります。また、ドミナントほどの緊張感はないのですがアーメン終止のようにトニックとトニックの間に挟んで柔らかにコード進行に変化を加えるようなこともあります。【Ⅱm7、ⅣMaj7】がこのサブドミナントに分類されます。
私はこのトニック・ドミナント・サブドミナントの説明をレッスンでする際はわかりやすいように、よくドラマや物語の『起承転結』のようなものだとお話しています。
例えば、ストーリーという観点から見たら、『起』から何も起こらず『結』になるような平和すぎるドラマはつまらなく感じるのではないでしょうか。また『転』の状態で物語が終わったら『オチは?』ってなりますよね。(あえてそういうやり方を狙うこともありますが。)
コード進行も同じだと思うのです。この、曲の中にストーリーのように起承転結を作っていく、それがこのトニック・ドミナント・サブドミナントにそれぞれ与えられた役割だと考えます。
コードの役割(『コードの機能』と呼ぶことが多いです)がわかったところで、実際にコード進行を考えていきましょう。
先程、『起承転結』のお話をしましたが、仮に
『起』『結』をトニック、『承』をサブドミナント、『転』をドミナント
だと考えてみてください。
(※以下、トニックは【T】、ドミナントは【D】、サブドミナントは【S】と表記します。)
そうすると、『起承転結』は、
【T】→【S】→【D】→【T】という並び方になりますね。
これに先程分類した役割の中からコードを選んで、実際にコードを当てはめてみましょう。
まず、最も基本的なそれぞれの役割の中でも代表格なコードを選んでみます。
【T】のグループの中から・・・IMaj7であるCMaj7
【D】のグループの中から・・・Ⅴ7であるG7
【S】グループの中から・・・ⅣMaj7であるFMaj7
このコードを先程の【T】→【S】→【D】→【T】に当てはめると、
CMaj7→FMaj7→G7→CMaj7
というコード進行が出来上がります。
ピアノやギターが弾ける方はぜひ実際に音を鳴らして弾いてみましょう。
このコード進行は最も言っていいくらい基本的な進行です。
このままでも良いのですが、基本的な進行すぎて、少しつまらないのですこし変化を加えてみましょう。
例えばFMaj7のところを、同じサブドミナントの仲間であるDm7に置き換えてみましょう。
そうすると
CMaj7→Dm7→G7→CMaj7
というコード進行になります。
どうでしょうか?FMaj7の時と比べると少しだけ深みが増したように感じるのではないでしょうか。
ちなみに、この中にある【Dm7→G7→CMaj7】というコード進行はツー・ファイブ・ワン進行と呼ばれジャズの曲には非常にたくさん出てきます。シンプルですがほんのり哀愁のようなものが感じられる洒落た進行で、現在のポップス曲にも多く使われています。
さらに変化を加えてみましょう。
例えば一番最後のCMaj7のところを、同じトニックの仲間であるAm7に置き換えてみましょう。
すると
CMaj7→Dm7→G7→Am7
というコード進行になります。
最後がAm7になったことで、一旦終わった感じはあるものの、まだまだこの先に展開がありそうな気配を感じるのではないでしょうか。
このように、トニックの中でとりあえずの終止感はあるものの、完全な終わりではない感じを出せるコードで一旦解決させて、また新たに展開をもっていくことで、小さな山を作ることができ、尺を長く曲を作ることができるようになります。
このようにして、コード進行をどうやって作ったら良いかわからないという方には、まずは【T】【S】【D】の並びを考える→そのグループの中からコードを選ぶという流れでコード進行を作っていくのがおすすめです。
ただし、【T】【S】【D】の進行には、やってしまうと不自然に聞こえてしまったり、人間の耳に違和感を感じてしまうような並べ方があるので、注意をしたい進行があります。
それは【D】の後に【T】以外の機能を持つコードを配置してしまうことです。
【D】の和音は増4度音程という人間の耳に不安定に聞こえる音程を含んでおり、安定した和音に進みたい、という性質をもっています。ですので、【D】の後には終止感のある響きをもつ【T】を配置するのが自然な流れになります。このような【D】→【T】への進行のことをドミナント・モーションといい、『解決する』と言ったりもします。
またその他にも和声学的には【S】→【S】と並べる際、ⅣMaj7→Ⅱm7はOKですが、その逆のⅡm7→ⅣMaj7という進行はしないという原則があったりします。
その他にも細かい規則はいくつかあります。
しかし、こういった和声学の規則に反しているようなコード進行が含まれていても、実際素敵だなと思う曲はありますし、使い方にもよるかと思います。理論的なことはあくまで参考に、最終的には自分の耳を信じるのが良いと考えています。
以上のことを踏まえて、先程のCMaj7→Dm7→G7→Am7の後に
さらにコード進行を作ってみましょう。
Am7で終わっているので機能としては【T】で一旦終わっています。
【T】→【T】に進んでもよいのですが、少し変化をつけるために次は【S】にしてみましょう。
【S】の次は【T 】にも【D】にも進むことができるのですが、さっきは【S】→【D】と進んだので今度は【S】→【T】と進めてみましょう。
その次はどうしましょうか。【T】の次はまた【S】にいってみましょう。
最後は【S】→【D】へ進んでみましょう!
とても雑な説明になってしまいましたが、以上の考えを並べると以下になります。
【S】→【T】→【S】→【D】
後は、その機能のグループの中からコードを選んでコード進行を完成させてみましょう。
例えば【S】のグループからFMaj7
【T】のグループからEm7
【S】のグループからDm7
【D】のグループからG7
を選んでみます。
そうするとこのようなコード進行になります。
FMaji7→Em7→Dm7→G7
最後はドミナントで終わっているので、CMaj7に解決させましょう。
FMaji7→Em7→Dm7→G7→CMaj7
これを、先程作ったCMaj7→Dm7→G7→CMaj7の後に続けてみます。
すると、
CMaj7→Dm7→G7→Am7→FMaji7→Em7→Dm7→G7→CMaj7
というコード進行が出来上がりました!
ぜひ、弾いて響きを確かめてみてください。
もっと続けたい場合は最後から二番めのG7から一番最初のCMaj7に戻ってコード進行をループさせるのも良いと思います。
このコード進行はあくまで一例で、他にも色々なコードを当てはめてみると面白いものが生まれるかもしれません。コードの役割を頭に入れながら素敵なコード進行を考えてみましょう!
以上、ダイアトニックコードを使ったコード進行の作り方でした。
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ピアニスト/作曲家 梶 双葉
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